ヤマアジサイ(山紫陽花)とは?種類や育て方のコツなど詳しく解説
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ヤマアジサイ(山紫陽花)は、日本の野山に自生しているアジサイです。華やかな西洋アジサイやガクアジサイとは違い、素朴な佇まいと豊富な品種で、人気のある山野草です。
この記事では山紫陽花の特徴や栽培方法などを詳しく解説していきます。これから山紫陽花を育ててみたい方、興味のある方は是非参考にしてみてください。
・ヤマアジサイ(山紫陽花)とは?
ヤマアジサイの基本情報をご紹介いたします。
植物名/ヤマアジサイ
学名/Hydrangea serrata
英名/Hydrangea
科名・属名/アジサイ科アジサイ属
別名/サワアジサイ
原産地/日本各地
ヤマアジサイは日本の山野に自生している野生のアジサイです。草丈は1~2m程度の低木で、半日陰の湿り気のある林や沢沿いに自生します。自生する場所が沢の近くということで、別名のサワアジサイとも呼ばれます。耐寒性はやや弱く、温暖な気候を好みます。
・ヤマアジサイ(山紫陽花)の特徴
ヤマアジサイは太平洋側の福島県以南から四国・九州にも分布し、日本の山野各地で見ることができます。日本の風土に良く合う植物で、半日陰の環境ではよく育ちます。
ガクアジサイと同様の咲き方をし、中央の花が咲くと装飾花という萼片が変化したものが数個つきます。西洋アジサイよりも小さく野趣の溢れる佇まいです。
アジサイは土壌の㏗によって花色を変化させていきますが、ヤマアジサイも同様で土の性質によって色が変化してしまう特徴があります。アジサイは別名を「七変化」とも呼びます。それは土壌によって色が変化していく様子を表しているのですよ。
・ヤマアジサイ(山紫陽花)の種類
ヤマアジサイは園芸品種も豊富に存在します。ここからはヤマアジサイの種類を少しご紹介していきます。お気に入りのヤマアジサイが見つかるかもしれませんね。
□酔湖姫(ヤマアジサイスイコヒメ)
□八重甘茶(ヤマアジサイヤエアマチャ)
大甘茶の八重咲品種です。色は青~薄紫色で調整されています。八重咲なので花自体に存在感があり、時には手毬咲きになります。
甘茶とはヤマアジサイの中でも葉に甘味のある品種のことを指します。灌仏会という釈迦の生誕を祝う日には花御堂の釈迦の像に甘茶の葉から作った甘茶というお茶をかけるというお祭りがあります。
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□木沢葉車(ヤマアジサイキザワハグルマ)
徳島県那賀町産のヤマアジサイです。両性花がわずかに残り装飾花が密に付き手毬咲きのように見えます。花色は涼しげな淡い青色です。装飾花は剣弁です。
□土佐緑風(ヤマアジサイトサリョクフウ)
土佐緑風は色の変化が特徴的なヤマアジサイです。「緑風」という名前の通り、咲き始めは黄緑色をしています。咲き進むにつれて青色になっていき、青地に緑色や黄色が混ざり幻想的な色合いになっていくのが特徴です。ガク咲きで装飾花だけでなく中心の両性花も色の変化を楽しめます。
□姫小町(ヤマアジサイヒメコマチ)
姫小町は静岡県の加茂花菖蒲園で作出されたヤマアジサイです。装飾花がはっきりとした美しい形で花弁の縁はギザギザとしています。ガク咲き品種で中央には両性花が集まります。花弁が大きく一重咲でも存在感がありますが、装飾花の花弁の付け根には隙間があり涼しげな印象も与えます。
□伊予白(ヤマアジサイイヨハク)
伊予白は一重咲のガク咲きヤマアジサイです。名前の通り白色のアジサイで清楚で可憐な印象があります。装飾花は大きく、花弁の縁がギザギザとしておりフリルのような可愛らしさがあります。また白いアジサイの特徴として土壌の酸性度による色の変化は無いようです。
□土佐の海(ヤマアジサイトサノウミ)
土佐の海は一重咲のガク咲きヤマアジサイです。土佐という名前から高知県産の品種であることがわかります。深い青色が高知の穏やかな海を彷彿とさせる美しい藍色を持っています。咲き始めは白っぽい薄青ですが、徐々に色が濃く変化していくのも特徴です。酸性土壌で育てるとより青が引き立ちます。
□乙女の舞(ヤマアジサイオトメノマイ)
乙女の舞は八重咲のガク咲きヤマアジサイです。装飾花の花弁が細身なので、八重咲ですがボリュームは抑えられており、より繊細な印象があります。両性花にも特徴があり、花が開いた後通常のアジサイはしべがよく目立つのですが、乙女の舞は両性花の花弁の先端が尖っているため星が散っているような綺麗な印象があります。
□紅(ヤマアジサイクレナイ)
紅は一重咲のガク咲きヤマアジサイです。紅という名前の通り、色は赤色系の花が咲きます。咲き始めは白っぽいのですが、徐々に白に赤色が滲んでくるように色が変化していきます。こちらは色の変化に土壌は関係が無いので、日当たりを考慮すると色が変化していきます。濃い赤色は目にも鮮やかで美しいですが、白地に少し赤が差しているのも上品で素敵な品種です。
・山紫陽花(ヤマアジサイ)の花言葉
アジサイの花言葉は「移り気」「浮気」「無常」などがありますが、ヤマアジサイの花言葉には「乙女の愛」「切実な愛」などの言葉もあります。
アジサイは土壌の性質によって色が変化してくることから、最初に挙げたような花言葉も持つのですね。また色によっても言葉が異なってきますので、贈り物にする際には調べてから渡すのも良いかもしれません。
・山紫陽花(ヤマアジサイ)の花の特徴
ヤマアジサイの開花時期は6~7月で、アジサイと同じ時期に開花します。花の色は品種によって様々ですが、青、白、ピンク、赤などがあります。ヤマアジサイは「装飾花※」に特徴があり、ガクアジサイと比較すると花序や花房が小さく咲きます。ガクアジサイよりも草姿、花は細く小さいですが、樹形は野趣に富んでいて地域による変異も多いので、多くの愛好家から人気があります。
※装飾花…アジサイの花には両性花と装飾花があり、装飾花とは一般的に花と認識されている部分のことを指します。装飾花のうち花びらに見える部分はがく片で、基本的にはおしべは持たず種をつけることはありません。ですので種をつけることのできる両性花に虫を呼ぶために装飾花のがく片を発達させたと言われています。
□山紫陽花(ヤマアジサイ)は土の酸度phによって花色が変わる
アジサイの花色の変化のメカニズムは、土壌中のアルミニウムイオンが根から吸収され、花に含まれるアントシアニン色素と結合することで青色になる仕組みがあります。つまり、アルミニウムイオンが吸収されなければ花は赤くなっていくということです。
上記のメカニズムを踏まえてここから各色の調整の仕方について説明をしていきます。
■ピンク色
ヤマアジサイはアルカリ性(石灰)の多い土壌では、花の色がピンクになります。アルカリが多い土壌ではアルミニウムが溶けにくくなるため、根から吸収できるアルミニウムが少なくなります。ピンク色の花を保ちたい場合には4~5月頃に苦土石灰を一握り株元に撒くと効果的に色を保つことが出来ます。
注意が必要なのが、元々アジサイは酸性土壌を好みますのでアルカリ性が強いと根を傷めてしまうことがありますのであげすぎは禁物です。
またリン酸が多い土もアルミニウムの吸収を抑える働きがありますので、ピンクや赤色にしたい場合はリン酸の肥料を使ってみるのも良いでしょう。
■青色
ヤマアジサイは酸性の多い土壌では、花の色が青色になります。日本は元々火山や雨の影響で酸性土壌の多い土地なので、庭植えをすると青色の花になることが多いですが、青色の発色を良くしたい場合には次の方法をすると良いでしょう。
酸度調整のされていないピートモスを春先に土に混ぜ込む、または500~1000倍に薄めた硫酸アルミニウムを与えてみましょう。ピートモスは酸度が調整されたものだと中性になり効果がありませんのでよく確認してから使用してください。
アルミニウムの吸収を妨げるリン酸の多い肥料は使わないようにすることも方法の一つです。
■赤色
上記したピンク色の花を咲かせたい時と同様に、アルカリ性の土壌づくりを心がけます。リン酸の多く入った肥料を使うのも良いでしょう。ピンク色は中性~アルカリ性の土の間で調節し、赤色は根を傷めない程度にアルカリ性に傾けるとより濃い色になります。
■紫色
紫色という状態は青色と赤色の要素が混ざった状態になります。例えば元々の花色が青色のものを赤色にしようと思っても綺麗に発色することは稀です。どうしても青色の色素の中に赤色が混じり青色よりの紫色になることが多いです。反対に元々ピンクや赤の品種のものは赤色寄りの紫色になります。お好みの紫色に合わせて上記を参考にphを調整してみてください。
・山紫陽花(ヤマアジサイ)の株はどう選ぶ?
株元がしっかりとして、ひ弱でないものを選びましょう。葉が豊かにつき、変色した葉がついていないものが好ましいです。葉がぽろっと落ちてしまうものや葉が黄色く脱色しているようなおのはあまり健康な苗ではないので避けましょう。花前でしたら蕾の多いものを選ぶと花がよく楽しめます。
・山紫陽花(ヤマアジサイ)の栽培環境
ここからヤマアジサイの栽培に適した環境についてご紹介させて頂きます。皆様もヤマアジサイを育てる際に是非参考にしてください。
□日当たり
ヤマアジサイは別名をサワアジサイというように、湿った山の中の沢のような場所を好みます。元々半日陰の沢や山に自生している植物ですので、栽培する際はできるだけ通年半日陰の場所を用意してあげるようにしましょう。耐陰性があるので、ある程度の日陰なら耐えますが、直射日光は苦手ですが日照は好みますので、午前中日の当たる場所や落葉樹の下で管理をするのがおすすめです。
□鉢植えの置き場所
半日陰の風通しの良い場所に置いてください。直射日光が当たらないように夏場は寒冷紗をするのも良いでしょう。
□地植えの場合の環境
鉢植え同様、半日陰の風通しの良い場所を選んで植えましょう。落葉樹の下などが向いています。ある程度の湿り気があり、西日に晒されない場所が最適です。乾燥には弱いので長時間直射日光の当たる場所や西日が強い場所は控えましょう。
□管理温度
ヤマアジサイは、耐暑性はそこそこありますが、耐寒性は少々弱いです。自生地は東北南部以南の太平洋側で九州まで分布していますので、どちらかというと温暖な気候を好みます。冬越しの際は鉢に植え替え霜や雪に当たらないようにするのが万全です。地植えでもマルチングなどをして霜が当たらないようにするなど、なるべく暖かく冬越しをすると翌年弱ることが少ないでしょう。
耐暑性はあるのですが、沢や山野に自生していることから直射日光と乾燥を嫌います。なので、暑いのが得意だからと日光がさんさんと当たる場所での管理はしないようにしましょう。葉焼けや乾燥でヤマアジサイが弱るのを防ぎます。
・山紫陽花(ヤマアジサイ)の育て方
ここからはヤマアジサイの育て方について解説していきます。用土の選び方や自分でできる剪定の方法など、ヤマアジサイを栽培する方は是非参考にしてください。
□用土
市販されている培養土や山野草用の土を使えば問題ありません。元々酸性の土を好むので、土の性質を弱酸性にしてあげると良いです。黒土をメインに腐葉土、鹿沼土、ピートモスなどを使用して土の通気性やphを調整しましょう。
□水やり
ヤマアジサイは水切れを嫌います。植え付け後に根付くまでは朝夕しっかりと水まきをしていきましょう。特に夏は水切れを起こすとすぐに萎れてくるので気を付けてください。夏の日中に水やりをすると水が暖かくなり根を傷めてしまうので気温の低い朝と夕にたっぷりとお水をあげます。反対に冬は夕方に水をあげると凍結するのでそちらにも注意が必要です。冬場は乾燥しにくくなりますが、乾燥してきたらお水をあげてください。花の部分よりも株元にお水をあげることもコツです。
□剪定
ヤマアジサイの剪定は翌年の花芽を付ける前にすると翌年も花が沢山咲きます。時期は7月末~9月ごろまでに剪定を済ませておくのが良いです。剪定は花が終わった枝の先から2節目を目指して剪定をしましょう。深めに切っても生育にはあまり支障は無いですが、花芽が付きにくくなるので注意してください。
冬の休眠期に剪定を行なう場合は、前年の古い枝や枯れ枝、花芽の付いていない枝を剪定してください。花芽のついている枝や新しい枝は剪定せずにあくまで不要な枝を整理するような気持で剪定しましょう。
□植え替え
鉢植えで植えている場合は、2~3年に一回のペースで植替えをするのがおすすめです。前に使っていた鉢よりも一回り大きい鉢を選び、通気性、排水、水もちの良い土を加えて、植替え後は活着を促すために水やりをたっぷり行います。時期は花後の7月頃か、休眠期の冬~早春が適しています。
□肥料
ヤマアジサイに肥料を与える際は、その肥料の役割と季節を把握しておくと良いでしょう。寒肥、お礼肥です。寒肥は冬~早春に緩効性の油かすや化成肥料で、春の活動前に力を蓄えさせておきます。開花前の5月くらいにも追肥します。花が終わったら、お礼肥として化成肥料や液肥を与えて次の花芽形成への力を補います。このサイクルを繰り返すと、花付きの良いヤマアジサイを保てます。
ただし、肥料のやりすぎによる肥料焼けが起こることもありますので、根元に近づけ過ぎる施肥と与え過ぎには注意してください。
・山紫陽花(ヤマアジサイ)の増やし方
ここからはヤマアジサイの増やし方について解説していきます。自分でヤマアジサイを増やしていきたいとお考えの方は参考にしてください。
□挿し木
ヤマアジサイは発根力が強いので挿し木に向いています。新芽が固まった6月頃に、その年に伸びた新梢を切り取り、大葉は半分程度に切っておきます。初めに水に差して水揚げをしたあと土に植えましょう。約20日で発根すると言われ、管理をしている時は半日陰の風通しの良い場所に置いておきます。
この季節の他に冬ざしという11月~12月にするものもあります。こちらは水につけて水揚げをする手順を省き、土に差した後は鉢を日なたで管理し、袋などを被せて暖かく管理します。
□株分け
株分けは3月ごろ、または9月~10月頃に行います。あまり小分けにせずに、4~5芽は残して分けていきます。大株に育ったヤマアジサイの老化を防ぎ、元気を取り戻すことができます。鉢植えでは根詰まりを起こしやすいので、根を切ることも大切です。
・山紫陽花(ヤマアジサイ)の栽培で注意したい病害虫
ここからはヤマアジサイを育てる上で注意しなければならない病害中について解説していきます。防除や対策に是非役立ててください。
□注意したい病気と対策
ヤマアジサイで注意したい病気は、うどんこ病や炭疽病、モザイク病、斑点病です。いずれの病気も風通しが悪く蒸れることでカビが発生して引き起こされます。風通しをよくするための剪定は防除に繋がります。うどんこ病は葉の表面に白くうどん粉のようなカビが発生し光合成を阻害します。炭疽病は褐色の斑点が葉に広がっていく病気です。いずれも見た目に病気が出てくるので兆候が現れたら殺菌剤を散布しましょう。
□注意したい害虫と対策
ヤマアジサイで注意したい害虫はアブラムシ、カイガラムシ、ハダニです。アブラムシもカイガラムシも茎葉を吸汁しヤマアジサイを弱らせます。アブラムシはウイルスを媒介することもあるので、見つけたらすぐに殺虫剤を散布しましょう。
植付けの際に土に混ぜ込む殺虫材などもあるので、土に薬を混ぜることで防除になります。また害虫も風通しの悪い込み合った場所が好きなので剪定をして風通しの良い管理をしましょう。
・山紫陽花(ヤマアジサイ)の栽培におけるポイント
- ヤマアジサイは水切れに弱い
ヤマアジサイは水が大好きな植物です。乾燥が苦手なので水やりはこまめに行いましょう。
- 西日を避け、半日陰の風通しの良い場所で管理する
ヤマアジサイは元々沢や山野に自生する植物です。落葉樹の下や半日陰で管理し、風通しの良い場所で管理すると綺麗に育ちますよ。
・山紫陽花(ヤマアジサイ)の栽培における作業カレンダー
1月 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
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植付・植替 |
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肥料 |
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開花 |
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剪定 |