人気のクロモジとは? 育て方のポイントや注意点をわかりやすく解説

皆様は「クロモジ」という樹木をご存知でしょうか?

和菓子に添えられる「黒文字」という高級楊枝に使用されていることで知られますが、実はお庭のシンボルツリーとしても人気が高い樹木で、雑木のお庭をつくりたい方にはおすすめの樹木のひとつです。

本記事では、お庭にクロモジを植えたいとご検討されている方や育て方のわからない方に、クロモジの育て方や特徴を詳しく解説していきます。


・クロモジとは

北海道西部~九州北部の温帯の低山地に自生しているクスノキ科の落葉低木です。

樹形が美しくしなやかな姿が特徴で、11月~12月の間には葉が黄葉をします。薄暗い場所に植栽してもよく葉が染まりますので、葉が光っているように見えることもあるようです。黄葉の期間は短く、葉が落ちると冬芽が顔を出しています。

2~5m程度の樹高になり、雑木の雰囲気が良く出る綺麗な樹形を楽しみます。ただ、強い乾燥を嫌いますので、長時間直射日光の当たる場所を避け地植えするのがおすすめです。

和名のクロモジという名前の由来は、樹皮にできる黒い斑点を文字のように見立てたことからと言われています。


・クロモジの花言葉は「誠実で控えめ」

クロモジの花言葉は「誠実で控えめ」です。残念ながら花言葉に関する詳しい文献は見つからなかったのですが、花は楚々として可愛らしく、葉は良い芳香を持ち、多くの薬効や用途を持つというクロモジの特徴をよく捉えたぴったりの花言葉だと思います。


・希少な国産のアロマ素材

クロモジは希少な国産アロマとしていま高く注目されています。エッセンシャルオイルの原料のおよそ98%が海外産と言われている中で、日本国内の固有種で精油が抽出できるクロモジは大変貴重な樹木とされています。

香りはまるで森の中を思わせるような瑞々しい爽やかな甘さがあり、上品な香りは心身共にリラックスをさせる効果があります。ご自宅で森林浴をしているような気持ちになりますよ。


・クロモジに含まれるリナロールには抗菌作用も

リナロールとはローズウッドやラベンダーといったアロマの中でも人気の高い香りに含まれる成分で、甘く華やかな香りを持っています。抗菌作用のほか、鎮静作用、抗炎症作用など体に優しい働きをもつ成分です。クロモジの穏やかな香りは不眠症などの症状を改善させるとも言われ、絶大なリラックス効果が期待できるのです。良い香りで体の中から調子を整えてくれる優れた樹木なのですね。


・クロモジの歴史

実はクロモジと私たちは古くから生活の中で関わってきました。現在でも、和菓子や料理に添えられる高級爪楊枝として愛用されておりますが、その歴史は江戸時代まで遡ると言われています。

クロモジは前述のとおり、良い芳香を持ち樹皮には抗菌作用があると言われ、歯の掃除をするための爪楊枝として昔から重宝されておりました。樹皮の模様はお菓子の横に添えるのにも美しく、和菓子のお供には欠かせない存在です。また、クロモジに含まれるリナロールには鎮静作用もあるので、薬用酒にも利用されてきました。クロモジは昔から私たちの生活の中で心身を共に整える役割を担ってきたのですね。



クロモジを育てるメリット


・丈夫で育てやすい

クロモジはとても丈夫な木ですので、害虫や病気の心配をする必要はあまりありません。また、強く剪定をしなくても自然と樹形がまとまってきますので、込み合っているところや伸びすぎている枝を少し剪定してあげる程度で良いでしょう。風通しがよくなると病害虫の予防もできます。手間をかけずとも自然な樹形が楽しめて、植物を育てることが初めての方でも非常に育てやすい植物です。


・どんな庭にもあわせやすい

シンプルな立ち姿でしなやかな樹形が美しい樹木ですので、どんなお庭の雰囲気にも馴染みます。和風のお庭にも洋風のお庭にも合わせやすく、四季折々の姿を見せてくれるところもクロモジの人気が高い理由の一つです。華美過ぎない樹形は見ていて飽きの無い美しさがありますよ。


・茶花、生け花にも利用できる

前述しましたが、クロモジは「黒文字」という楊枝に使用されています。ある時茶事の亭主が庭のクロモジで楊枝を作ったところ、仄かな良い芳香がしたため使用されるようになりました。茶事では亭主が削った黒文字を菓子に添えることが良いおもてなしとされています。そして客は一期一会の証として楊枝を持ち帰ることが習わしとなっているのです。

生け花や茶花として利用される際は、春の花木としてそのしなやかな枝ぶりや新芽の美しさなどを楽しみます。



クロモジの育て方

丈夫で育てやすいクロモジですが、これから育て方を紹介していきます。是非参考にしてみてくださいね。


・植え付け

植え付けの時期は11月~2月頃を目安にしましょう。落葉している時期に植え付けを行い、春の活動期に土に根付かせるようにするためです。

直射日光をあまり好まないので、半日陰~日陰の場所を選んで植え付けます。日光に当たる時間は一日のうち2~3時間程度で構いません。土壌は水はけの良い場所を選びましょう。


・水やり

根付いてからは頻繁に水をやる必要はありません。日照りの日が続き、極端に乾燥していなければ基本的には自然の雨の水で育ちます。水のやりすぎは根腐れの原因にもなりますので注意してください。

しかし、お庭に植え付けたばかりの頃は水やりを欠かさず行ってください。根が張る前は水を吸い上げる力が弱いので要注意です。


・肥料

植え付けの際に堆肥や腐葉土を混ぜ込んでおけば、基本的には肥料を追加する必要はありません。肥沃な土壌であれば肥料を追加しなくても育てることが出来ます。

もしくは、寒肥として冬に少量の肥料を足してあげてください。


・剪定

クロモジはあまり剪定をしなくても樹形が整います。落葉の季節に枯れ枝や込み合っている部分の枝を枝元から抜くように剪定してあげると綺麗にまとまります。枝先を切り詰めるようにすると自然な姿では無くなってきますので注意しましょう。



クロモジを育てる時の3つの注意点


・植え替えは少ない方が良い

クロモジは根を動かしたり、植え替えを沢山したりすることを嫌います。基本的には地植えが基本なので、一度植えたら場所をこまめに動かすことはしないようにしましょう。

鉢植えにする際も、根鉢よりも1~2回り大きな鉢を選び植えつけますが、鉢を替える際に根を触ってしまうため、数年のうちに地植えにした方がクロモジを健康な姿で楽しむことが出来ます。


・まれにカイガラムシがつく

病害虫で悩まさることは少ない樹木ですが、カイガラムシがつくことがあります。風通しが悪かったり、枝が込み合っていたりすると発生しやすくなりますので、まずは剪定で風通しの良い樹形づくりをこころがけましょう。

カイガラムシが付いているのを発見した場合は、ブラシなどでこすって除去をし、市販されているカイガラムシ専用の薬剤を散布することをお勧め致します。


・暖かい地域の苗には注意

暖かい気候の場所で育てられた苗木は寒さに弱い場合があります。木が幼いうちは冬の寒さをしのげるように、腐葉土やバーク堆肥などでマルチングをして株元を保護してあげることで弱りにくくすることができます。



クロモジの増やし方

クロモジの増やし方は挿し木が基本になります。クロモジの挿し木の適期は6月~7月が適期となります。実生でも芽が出ることがありますが、今回は挿し木の方法を紹介させて頂きます。


・基本的な挿し木の方法


■挿し穂、鉢、用土、発根促進剤を用意する

挿し木に使う枝(挿し穂)を選んで、切りましょう。10㎝~15㎝くらいを目安にカットしてあげると良いです。切り口を斜めに切っておくと更に良いです。

土は清潔なものが良いので、挿し木用の土や赤玉土100%のものを使います。腐葉土や有機肥料の入った用土ですと菌も繁殖しやすいので切ったばかりの挿し穂が弱ってしまう可能性があります。

鉢は小ぶりなものでOKです。水が直接抜けるのを塞ぐために鉢底石なども用意しましょう。


■下葉を取る

挿し穂には葉がついているものを使用します。下葉を取り、葉が2~3枚ついている状態にしましょう。あまり葉が多いと葉から蒸散される水分が多くなり、根がまだ生えてない挿し穂には負荷がかかるので、あらかじめ葉の枚数を減らしておくことが必要なためです。葉を半分程度にカットするのも有効です。


■水に浸す

用意のできた挿し穂を水に浸して水揚げ作業を行います。1~2時間浸しておきましょう。


■発根促進剤を塗る

水揚げの終わった挿し穂に発根促進剤を塗布し、挿し穂の用意は完了です。あとは十分湿らせた土に挿し穂を植え付けていきます。


■水やりに気を付ける

挿し終わってからは乾燥に気を付けて管理をしていきます。潤いが大切なので、明るい半日陰の風通しの良い場所で管理します。鉢の表土が乾いたらすぐに水やりをしましょう。乾燥を防ぐためにビニールを優しくかけておくと良いです。

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